【労働契約の最低基準と契約期間】~人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識 労働法⑦

  1. HRガーデン
  2. 47 view

ハロー!HRガーデン~人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識、労働法の第7日目 労働契約についてです。

労働法 第7日目 労働契約の基本、期間について

前回、労働者の定義についてご説明いたしましたが、今回はその労働者との労働契約についてです。あまり意識したことがないかもしれませんが、臨時のバイトであろうと正社員であろうと、必ず契約をしているんですね。第1日目でも扱いましたが、日本において契約は口頭でも成立します。ですが、書面にサインをもらう方法が一般的です。契約書の表題は、「雇用契約書」などが多いと感じておりますが、似たような表題であれば、この「労働契約」について書かれたものと考えていいでしょう。

ではまず、こちらの条文から。

労働基準法 第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

ん?何か見たことのある表現では?と思われた方は記憶力がいいですね。第1日目に出てきた労働契約法12条に非常によく似ています。

労働契約法  第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

この、「達しない条件は無効」というのは「最低基準効」、「無効になった場合は、〇〇で定める基準による」というのは「直律的(補充的)効力」と呼ばれます。

労働契約法12条は、就業規則の規定未満の労働条件は、例え労働者との合意があっても無効である、との規定でした。そして、今回の労働基準法13条は、「労働基準法の規定を下回る労働契約は無効である」ということを言っています。そもそも、就業規則の内容は、労働基準法の定める基準以上でなければならないということです。まあ、就業規則と違って、こちらは「本人の合意があればそれでいいだろ!!」という勘違いはないかと思います。通常、労働法を学習するにあたっては、この労働基準法13条の方を先に学習するのですが、実務上さすがに「労基法を下回る基準でも合意さえあればOKですよね?」というご相談は皆無でしたので、先に勘違いの多い労働契約法12条を説明しました。

ただ、就業規則を軽視してしまう人が労使ともに多い中、就業規則を伝家の宝刀と捉えている人もたまに存在します。「ノルマが達成できない(ミスをした)場合は、休日に無給で働いてもらう」というブラック臭が漂うルールも、就業規則に書いてあれば問題ないと考えている人もいます。怖いですね。まあ、「働かせてやってる」という意識の経営者ならば、このような思想になるかもしれません。当然、違法です。どこに抵触するかと言われれば、まあ労働基準法24条の「賃金の全額払い」違反ですとか、無給とはすなわち最低賃金を下回っているということなので、最低賃金法違反とか。になりますかね。前提条件によって、多少変わってしまいますけれども。

ちなみに最低賃金法にも、この最低基準効と直律的効力があります。

最低賃金法 第4条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

そもそも、民法でいうところの公序良俗に反するのではないかとか、倫理的に問題があるだろと言いたいところですが、この手のルールを作る人は、「これのどこがいけないんだ?会社に迷惑をかけたのだから当然だろ!!」という思考回路なので、もしあなたの上司や経営者が怪しげなルールを作ろうと画策を始めてしまった場合は、労基法などの法律を用いて説明するしかないかなといったところです。

法律は法律、現場は現場であると言われれば、もはや理屈の問題ではないので、退職を考えた方がいいでしょう。コンプライアンス意識の欠如は、やがて経営上の問題を社員のやる気の問題にすり替えてしまうことに繋がり、果ては労働法のみならず、各方面の法令を破ってまで利益を上げていこうなどという思想が醸成されていくのだと、市場を無視したノルマから不正が横行する企業の問題を見て、思うところであります。

契約期間についての規制

少し横道にそれましたが、契約期間についての規制です。

正社員(法律的な定義はありませんが)については「期間の定めのない契約」ですので、特に意識する必要はありません。

契約社員やアルバイトなどを雇う時、必ず契約期間を定めるはずですが、雑感としては6か月や1年が多いでしょうか。試用期間的に、入社時の契約だけ3カ月としたり、一斉に更新手続きを行うために、入社時のみ年度末までの契約としたり、様々なケースがありますが、ほとんどが「1年以下」の契約期間ではないかと思います。

では、法律はどうなっているか。

労働基準法 第14条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、五年)を超える期間について締結してはならない。

一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約

二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

なんと、原則として「3年契約」までOKなんですね。そして、厚労省が定める専門的職業と、満60歳以上の労働者であれば5年までOKです。1行目の「一定の事業に完了に必要な期間を定めるもの」とは、例えば建設などがイメージしやすいかと思います。工期が7年であれば、7年の契約を結ぶことも可能ということです。実際にそのような契約があるかどうかは別ですが。

ただ、一般的には、3年限度の方も5年限度の方も、1年以下で契約更新を行っていることがほとんどです。特殊なプロジェクト等で雇用されている一部の専門人材を除き、あくまで雇用の調整弁として扱われているという実情から、1年を超える契約期間を結ぶメリットは、現状の企業側においてはありません。労働者側からみても、時給を上げる交渉を行うことはあっても、契約期間を延ばす交渉を行いたいと考える方は稀かと思います。ニーズがあるとすれば、65歳以上など年齢的に雇止めがあると再就職が厳しい方などが考えられますが、企業側が首を縦に振らないだろうなといったところです。

現在は労働集約的な産業での人手不足が顕著ですから、人材確保の観点から積極的に限定正社員(無期契約)に転換する企業も出てきているところではありますが、労働契約を長くする、といったことはあまり聞かれません。本来は交渉材料としてあってもおかしくはないのですが、労使ともに契約についての意識がそれほど高くない世の中では仕方のないことなのかもしれません。

そう、契約に関する意識が希薄だと、契約更新も「なあなあで」済ませていることが多いです。

あなたの会社では、契約社員やパート社員の契約更新をどのように行っていますか?ほぼ、自動的に通知を本人へ送っているだけ、という会社も多いですが、非常にリスクが高いです。

次回は、契約更新や雇止めについてです。

kohata

1983年生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続フロー確立など、労務管理全般を組織内から整えるレアな存在。現在は、急成長中&上場準備中のベンチャーに在籍。ウェブメディアへの寄稿も行っております。

記事一覧

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。