【採用時の差別禁止・裁量など】人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識~労働法②

  1. HRガーデン
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こんにちは!HRガーデン~人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識、労働法の第2日目です。サクサク読み進めて、現在の仕事に当てはめて考えてみましょう。

労働法 第2日目 まだまだ基本は続く

まだまだ2日目でございますので、地味な題材が続きます。雇止めとか解雇とか懲戒とか、面白そうな高度な経営判断が求められるようなものをはよ扱え!と思われるかもしれませんが、上っ面だけを捉えても結局勢いや感情論で判断してしまいがちですので、まあ土台をしっかりと作っていきましょう。

労働基準法 第3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

労働基準法 第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

はい、これもまた現代においては当たり前のことが書かれていますね。まず第3条。国籍、信条、社会的身分で差別するなと。当然、職責や勤続年数が違うことによって差をつけることは問題ないですが、未経験者の入社で日本人は時給1000円、外国人は最低賃金、とするのはあきまへんでということです。

ただ、実務に携わる人間としては、これに抵触しそうな案件がよくあります。それが、外国人技能実習生の労働条件です。今や外国人労働者がいないと組織がまわらない、といった会社も多いですが、日本人や「定住者」の在留資格で来日する日系人は、人材の獲得競争により時給は上昇傾向です。しかし技能実習生には市場の原理が働きにくいため、「最低賃金」で雇用する。こういったことが結構あります。

会社側としては、「あくまで実習に来ている」、「日本語が不自由だから」との主張もできなくはありませんが、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)第9条の計画認定基準にも「技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」とありますので、実習生とその他で時給設定が違う会社は早急に是正したほうがいいでしょう(モチベーションの観点でも)。

なお、ここでいう「労働条件」については、採用は含まれておりません。このことは昭和48年の最高裁判決(三菱樹脂事件)でも、ハッキリと示されています。新興宗教に入っていることを理由として、採用を拒否しても何ら問題はないということです。

じゃあ、採用は全く制約がないのか、といえばそうではありません。下記のような制約があります。

  • 性別による差別禁止・・・男女雇用機会均等法5条
  • 年齢による差別禁止・・・労働施策総合推進法9条(例外規定あり)
  • 労働組合非加入を採用要件とすることの禁止・・・労働組合法7条
  • 障碍者に対しての差別禁止・・・障害者雇用促進法34条

えー、ずらずらと書きましたが、性別と労働組合はまあ単純ですよね。今時「あなたは労働組合に入っていますか?」と聞く面接官もいないと思いますけど。で、年齢はどうか?「結構年齢制限のある求人募集を見かけるような気がするんだが・・・」という方も多いと思います。これには例外規定があるんですね。別の機会にご案内いたします。

障害者雇用についても、「趣旨はわかるけど障害の程度も様々だし事実上雇えない場合も・・」といったことも多いと思います。これもまた、別の機会にご案内いたします。

制約が全くないわけではないですが、採用については、基本的には会社の裁量が広く認められているということです。喫煙者の採用を制限する会社が話題となった時期もありましたが、私生活上のこととはいえ、会社の裁量の範囲内といえます。直接的な規定はなくとも、公序良俗に反するとして民法上の不法行為に問われるケースはあり得ますが、喫煙については、「喫煙の自由は憲法13条の基本的人権のひとつに含まれるとしても、あらゆる時、場合において保障されなければならないものではない」との最高裁判例(昭和45年9月16日)もありますので、公共施設や飲食店の禁煙化が進む世相を鑑みても、違法性のあるものとはいえないでしょう。

さあ次、第4条です。賃金について男女差別をするなと。もう当たり前ですね。しかし、「賃金だけ???」との疑問が湧くと思います。ええ、労基法では、賃金についてだけ、性別による差別を禁止しているのです。採用や昇進についての差別禁止は、男女雇用機会均等法にて定められています。

当たり前、と表現してしまいましたが、現代においても男女で賃金表が分かれている等の、にわかには信じがたい就業規則を使用している会社がまだまだ存在しています(実際に運用しているかは別問題ですが)。

また、稀にあるのが、扶養手当(家族手当)について、男性にしか支給されないような規定となっているケースがありまして、これは当然4条違反となります。扶養手当(家族手当)については、税法上の扶養か社会保険上の扶養に入っている家族に対して支払う規定が大半です。しかし、専業主婦が当たり前の時代からメンテナンスされず、「妻がいる場合は〇万円支給」というトンデモ規定が残っている会社もあったりします。

もし、そのような規定(そのように読み取れる規定)があなたの会社の就業規則(給与規程)に書かれていましたら、実際の運用では女性に支払っていたとしても、早急に改正しましょう。生きた化石として、天然記念物化する必要は全くありませんので。

本日もお疲れさまでした。

流浪の社会保険労務士

1983年生まれ。最後の氷河期世代。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則・人事制度・労務手続フローなど、労務管理をデザインする。社労士法人退職後は、シリーズAの資金調達に成功した急成長中ベンチャーに入社。2年後のIPOを見据えた労務管理体制をゼロから構築した。その後、M&Aに積極的な東証一部上場のIT企業にて、前例にとらわれない労務管理体制の改革や新制度の導入、グループ会社に対する労務管理支援を行う。

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