【求人募集の記載】人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識~労働法⑤

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こんにちは!HRガーデン~人事部・管理職の仕事に役立つ法律知識、労働法の第5日目 今回は求人を出す際の募集要項について、法律的な注意点です。

どうでしたか、前回の内容は?採用といってもあんまり面白くなかったですかね。とはいえ、文系の仕事は、専門分野以外の知識も問われる総合力勝負ですから、幅広く興味を持つことが必要なのではないかと勝手に思っております。もう少し、採用・求人について掘り下げます。

労働法 第5日目 求人募集時の労働条件明示

今回は、求人募集を出す際に気を付けなくてはいけないことについてです。当然月給〇〇万円のような情報を自社HPや採用媒体、求人広告、ハローワークなどに募集要項として掲出するわけですが、必ず明示しなくてはいけない労働条件というものが定められています。

  • 業務内容
  • 契約期間
  • 試用期間 (ある場合) NEW!
  • 就業場所
  • 就業時間(始業終業時刻、裁量労働制の場合はその旨とみなし労働時間 NEW!
  • 休憩時間
  • 休日
  • 所定時間外労働の有無(いわゆる残業)
  • 賃金 (固定残業代がある場合はその旨と〇時間分の手当等の記載)NEW!
  • 加入保険 (健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険のこと)※確定拠出年金等、企業年金について明示義務はない。
  • 募集者の氏名又は名称 NEW!
  • 雇用形態 (派遣労働者の場合のみ、その旨を必ず記載) NEW!

結構ありますね・・。限られた求人スペースに載せられないのでは?実際こんなに書いてないだろハゲ!と思われたかもしれませんが、やむを得ない場合は、「詳細は面接時にお知らせいたします」との記載をしたうえで、一部のみ記載すればOKです。ただ、初回の面接時に必ずこの事項は応募者に伝えてください。

まあ、やっぱり色々盛りたい職場の魅力を伝えたいですから、スペースは有効利用しなければいけませんよね。ウェブ媒体なら融通が利きやすいかもしれませんが、まだまだ健在な求人情報誌なんかだと、かなりスペースが限られていますので。

実はこの明示事項、2018年1月という最近の法改正で付け加えられた項目があるんですね。それが、NEW!をつけている、「試用期間」「派遣の場合はその旨」「募集者の氏名又は名称(社名)」「裁量労働制」「固定残業代」の5項目です。試用期間があるなんて聞いてない!派遣だなんて聞いていない!というトラブルを防ぐためと思われます。で、社名もハッキリさせましょうと。その3つは、まあそんなもんかなといったところですが、後の2つ、「裁量労働制」「固定残業代」、出ました、なんとなく怪しげなトラブルが多そうなイメージですよね。

勘違いしている方もたまにいらっしゃいますが、これらは正しく運用されていれば、何ら法違反を問われるものではありません。とはいえ、確信犯的に悪用している企業もありますし、試用期間などと同様に、「聞いてなかった」というトラブルも実際多かったのでしょう。

「正しい」固定残業代制度と大庄日本海庄や過労死裁判

裁量労働制については、野村不動産が本来対象外の労働者に適用していたとして厚生労働省から社名公表されていましたが、労働時間に対する規制と合わせて、別の機会に取り上げたいと思います。

単に求人募集時の明示事項として、薄い説明をするだけのキュレーションメディアも多数ありますが、「役立つ実践的な法律知識」を掲げていますので、ここから派生して固定残業代について掘り下げます。業界では略して「コテザン」と呼ばれます。

正しい固定残業代の要件は、下記の通りです。

  • 基本給と明確に区別されている
  • 固定残業代が残業〇〇時間分の金額なのかを明確にしている
  • 〇〇時間を下回っても固定残業分が出るのは勿論、〇〇時間を上回る残業をした場合は、その分について法定の割増賃金(残業代)を追加支給する

はい、この3つの要件があります。どうですか、あなたの会社では「正しい」固定残業代になっていますかね?今回のテーマである求人募集については、①基本給が〇〇円 ②固定残業代(名称は業務手当など様々ですが)が〇〇円で、〇〇時間分の時間外手当分である旨 ③〇〇時間分を超える場合には、割増賃金(残業代)を追加支給する旨 の記載が必須です。

あらかじめ明記して説明しておかないと、「サービス残業ではないか!」と苦情が発生することになりますからね。法律上もそうですが、トラブル防止の観点からも必要でしょう。

ここが明確にされていなかった事例として、大庄(日本海庄や)の過労死裁判があります。2007年に新卒4カ月目での過労死が認定された、大変いたましい事件でありますが、労働時間と同時に問題視されたのが、基本給に80時間分の固定残業代が組み込まれ、さらに求人募集時の明示がないうえに、80時間に満たない場合は減額がされていたことです。他にも色々な論点がある事件ですが、テーマから外れますので、興味のある方はグーグル先生にでも聞いてみてください。

月給25万と表示して、そのうち実は固定残業代が7万円含まれておりました、というような求人募集は完全に黒ですので、お気を付けください。

求人募集時と異なる労働条件で入社してもらう時の注意

もう一つ、2018年1月に改正された点があります。求人募集の時に明示した条件と異なる条件で入社してもらう場合、当然「労働条件の明示」は行わなくてはいけませんが、「募集時とどこが違っているか」を明確にすることが法律上求められるようになりました。これはまあ、想定されるのは「会社が求めるレベルにはもう一歩の人材だけれでも、少し条件を下げるか、契約社員からならOKかな・・」という状況でしょうか。とはいえ、誤認があってはいけないので、募集時の条件とは違いますよ、とハッキリわかるように通知してくださいね、ということです。

月給25万を22万に下げる場合は勿論ですが、月給22万から25万円などと募集して、その枠内で決定された場合であっても、募集時と異なる条件とされてしまいます(ここは少々疑問ですが)。

募集時と異なる労働条件ですよ、という明示は、①新旧対照表を交付 ②労働条件通知書に下線やマーカーを入れるなどして目立たせる のいずれかの方法で行います。

①はかなり現実離れした方法と考えられますので、ほとんどの場合が②で対応でしょう。

いろんな決まりがありますね!

今日のお話は、こちらのリーフレットにまとまっています。

参考:労働者を募集する企業の皆様へ ~労働者の募集や求人申込みの制度が変わります~ <職業安定法の改正> (厚生労働省作成)

本日もお疲れ様でした!

流浪の社会保険労務士

1983年生まれ。最後の氷河期世代。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則・人事制度・労務手続フローなど、労務管理をデザインする。社労士法人退職後は、シリーズAの資金調達に成功した急成長中ベンチャーに入社。2年後のIPOを見据えた労務管理体制をゼロから構築した。その後、M&Aに積極的な東証一部上場のIT企業にて、前例にとらわれない労務管理体制の改革や新制度の導入、グループ会社に対する労務管理支援を行う。

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